最新記事:2017年04月25日更新
2017年04月25日更新
これまで北海道から東北、信州と様々なシードルをご紹介してきました。今回はグルメやものづくりにおいても注目が高まる北陸へと場所を移します。北陸3県の中で唯一シードルづくりが行われている富山県のシードルをご紹介いたします。
富山県の西部に位置する氷見市は、春にはホタルイカや白エビ、冬は寒ブリなど海の幸で有名な産地として知られていますが、実はシードルもつくられています。
氷見駅から車で20分程の距離に位置する余川(よかわ)地区に向かって山道をしばらく上っていくと、パッと視界が開けて、一帯に広がるブドウ畑やガーデン、そしてワイナリーが姿を現します。そこはまるで楽園のような光景で、富山の隠れたリゾート地に来た感覚を覚えワクワクと期待感に胸が高まります。天気の良い日は立山連峰を、そして氷見湾が一望できる小高い丘にあるワイナリー、それが「SAYS FARM(セイズファーム)」です。
ワイナリーには、氷見産の食材を使った料理をワインとともに味わえるおしゃれなレストランやショップ、ギャラリー、そして新たに宿泊施設も完成し、一日を通じて楽しむことができます。
SAYS FARMは、江戸時代から続く老舗の魚問屋「つりや」が経営母体となっており、ワイナリー設立時の社長だった釣誠二さんが氷見で生まれた自然の恵みを通じて「氷見ブランド」を育てていきたいと考え、一つ一つすべて自分たちで作り上げていく、循環型の里山事業を行おうと立ち上がったのがはじまりでした。2008年に荒廃地の開墾に着手し、2011年にワイナリーが設立され醸造が始まりました。その後、先代の想いを引き継ぎSAYS FARMでは、苗植えから栽培、醸造まで、自社100%にこだわったワインづくりを行っており、シードルにおいても、現在自社畑で、ふじやグラニースミスを栽培し醸造が始まっています。
富山でシードルと聞くと意外に思われるかもしれませんが、氷見市や高岡市などではブドウをはじめリンゴや西洋梨(ルレクチェ)の栽培が盛んな地域でもあります。その氷見で栽培されたりんごを使ったシードルを手掛けているのが、醸造責任者である田向俊さんです。大学卒業後、地元氷見で就職した会社がSAYS FARMを立ち上げることになり、ワイン醸造の勉強をするため、長野県東御市にあるヴィラデストワイナリーで2年間研修を積みました。地元の風土を感じ、その土地に合ったワイン、シードルづくりをすること。田向さんは真摯にそれと向き合い、次々に素晴らしいワインを生み出しており、若き醸造家としても注目されている存在です。そんな田向さんがつくるシードルもまた、氷見を感じる、氷見の食と寄り添うシードルであり、新たな挑戦をしながら進化し続けています。
◆今月のテイスティング
セイズファーム シードル
富山県産ふじ100%を使った瓶内二次発酵により、ゆっくりと時間をかけて丁寧につくられたシードル。美しく輝きのある黄金色に軽快な泡。熟したりんごやアップルパイのような香りが華やかに広がります。厚みもあってふくよかな味わい。りんごの渋みも程よく感じられますがのど越し爽やかなシードルです。まさに魚介類との相性が抜群のシードルといえるでしょう。
*味わい ドライ
*サイズ/価格 750ml / 1,800円(税込)
*アルコール度数 7.8%
SAYS FARMのシードルが飲めるオススメのお店が、東京の情緒溢れる街、神楽坂に2015年にオープンしたフランス料理店「bisous(ビズ)」です。オーナーシェフの村田敏範さんは、日本ワインへの愛情が人一倍あって、つくり手の想いをお客さまに少しでもお伝えできたらと、2015年にお店をオープン後、手作りの日本列島が描かれた大きなワイナリーMAPを置き、自身で体験したワイナリーでの話やつくり手さんのエピソードなども交えて紹介してくれます。和の素材、国産食材をふんだんに使いフレンチの技法を生かしたモダンなスタイルの料理。ここでSAYS FARMのシードルにぴったりなお料理と出会いました。
静岡県産真サバのマリネ 840円
やさしく酢で〆た鯖のマリネに春菊とほうれん草のソース、りんごのピューレも添えられた様々な味の組合せが楽しめるお料理。マリネに挟まれたミョウガやネギ、シソがアクセントとなり、鯖とシードルの渋みが絶妙にマッチします。
シードルは料理を選びませんが、日本海の風土から生み出されたシードルには、ぜひ魚介料理と合わせてみてください。
(文・写真:渡部麻衣子)
【SAYS FARM】
http://www.saysfarm.com/
【bisous】
http://bisous-kagurazaka.com/