最新記事:2016年12月25日更新
2016年12月25日更新
近年、ワイン産地として世界からも注目され、ワイナリーが増えている長野県。りんご生産量が全国2位の同県では、戦時中より小布施町にあるワイナリーでシードル作りが始まりました。
現在、県内の約20ヵ所の醸造所でシードルを作っており、そのうち最も多い作り手がワイナリーです。北信・東信編、中信・南信地域の2回に分けて、シードルにも力をいれているワイナリー4軒をご紹介します。
長野市の北側に位置する飯綱町は、長野県の人が「りんごの本場」と言うほど、りんご産地として有名な町で、1987年に旧三水村の小高い丘の上にサンクゼール・ワイナリー(当時は斑尾高原農場)が建てられました。
同社社長の久世良三さんが、フランスのシードル産地であるノルマンディー地方を訪れた際に、りんご畑が広がる牧歌的な農園風景に感動し、レストラン、チャペルを備えた滞在型ワイナリーを築いたのがはじまり。今では全国に50店舗以上のショップを展開し、人気のジャムやワインなど様々な食のスタイルを提案しています。
同社が、町や地元のりんご農家と協力し、本場フランスの製法も取り入れて作ったシードルが「いいづなシードル」です。毎年5月上旬には、その新酒を楽しむイベント「シードルガーデン」が開催され、県内外から多くのシードルファンが訪れます。
今回、オススメするのは「いいづなシードル」シリーズのブラムリー(写真左)と高坂りんご(写真右)です。
ブラムリーはイギリス原産で酸味が強いクッキングアップル、高坂りんごは飯綱町の天然記念物にも指定されている小さな和りんごで、それぞれ町を代表する品種です。ノルマンディー産シードルのようにやや甘口に仕上げられた「いいづなシードル」は、りんごらしい味わいのなかに、それぞれのりんごの特徴が現れており、初めての方も、飲み慣れた方も楽しめるシードルに仕上がっています。
*味わい やや甘口
*サイズ/価格 750ml / 1,944円(税込)
*アルコール度数 ブラムリー:5.5% 高坂りんご:6%
次にご紹介する東御市は、千曲川中流域の東信に位置し、巨峰やくるみ、りんごなどの果樹栽培が盛んな地域です。この地にエッセイストで画家の玉村豊男さんが、標高850mの丘から見える美しい風景に魅了されて立ち上げたのが「ヴィラデスト ガーデンファーム アンド ワイナリー」です。シードル作りはワイナリーを立ち上げた2003年頃から続けており、まだブドウ畑が小さく十分な量のワインができなかった頃、何かつくらなければならないという状況のなか、他地域のブドウではなく地元のりんごを使ったシードルを本格的につくろうと考えたのが始まりでした。
「フランス・ブルターニュで学んだ製法に従い、本場さながらに仕込んでいます。」
そう語るのは、醸造責任者の小西超さん。「日本の生食用りんごで仕込んだシードルはあっさりと淡白になりがち。味わいの厚みや複雑さを出すために果汁の処理等、細かいところを試行錯誤しながら現在の味わいになったが、まだ発展途上です。」と今後の更なる品質向上に意欲をみせています。海外におけるクラフトサイダーブームの背景から日本でのシードルの可能性も感じていて、今後も様々なシードル作りが行われる予定です。
地元東御産の「ふじ」を瓶内二次発酵でゆっくりと醸した辛口シードル。エチケットに描かれたりんごの花のように、華やかで上品なりんごの香りにつつまれた、すっきりドライな大人のシードルです。その味わいは、フランス・ブルターニュ地方のように、破砕したりんごを布で包みミルフィーユ状に重ねて、上からゆっくりと圧力をかけて果汁を搾る製法にもありそうです。
*味わい 辛口
*サイズ/価格 750ml / 1,850円(税込)
*アルコール度数 6%
酪農も盛んなフランス・ノルマンディーのりんご畑では、牛がのんびりとしている風景を目にすることがありますが、ここヴィラデストでは、ヤギの"ヤギ子"が人気者です。
ときどき、家の外に出て食事をしているので、ぜひ会いに来てください。【まとめ】
国内で唯一シードルが含まれる長野県原産地呼称管理制度で、信頼と品質の高いシードルの供給にも力を注いでいる長野県。今回ご紹介した北信・東信地域は、北陸新幹線や上信越自動車道を使い、首都圏からもアクセスしやすい地域。今回ご紹介したワイナリー2軒の他にも、シードルをつくっていますので、同地域のワイナリーを訪れた際には探してみてください。次回は、中信・南信地域のシードルをご紹介いたします。
(文:渡部麻衣子)
【サンクゼール】
https://www.stcousair.co.jp
【ヴィラデスト ガーデンファーム アンド ワイナリー】
http://www.villadest.com