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【第8回】地域と共に育まれる信州のシードル(中信・南信編)

2017年01月25日更新

前回の北信・中信編に引き続き、今回は長野県の中信・南信地域のシードル作りをご紹介します。

シードルの歴史が長いのは北信・東信ですが、近年、リンゴ農家と醸造所ともに積極的にシードルづくりに取り組み、今では長野県のシードルづくりをリードしているともいえるのが、中信・南信地域です。昨年末には、長野県初のシードル専門の醸造所が2軒完成するなど、注目されています。

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01ooike01.jpg 松本市の西側に位置する山形村は、長芋や蕎麦が有名ですが、北から南までりんごが栽培されている長野県らしく、りんご栽培もおこなわれています。松本空港から西へ進み、「日本アルプスサラダ街道」を横切ると、2015年に新しく誕生した大池(たいけ)ワイナリーに到着します。

 大池ワイナリーの立ち上げは、実家の酒屋である有限会社むかいやを引き継いだ社長の藤沢啓太さんが、親戚から任された山葡萄園で採れた葡萄を近隣のワイナリーに委託してワインにしたことがきっかけでした。村内におけるワイン関連事業の従事者の増加や遊休農地の解消にもつながると考え、村の協力を得て、2014年3月「信州山形ワイン特区」の認定を受けたのち、2015年7月に念願の果実酒製造免許を取得してワイナリーが誕生しました。記念すべきシードルの初解禁日は、2015年11月の山形新蕎麦祭りでした。シードルと蕎麦とは、ここ山形村でもシードルの伝統あるフランス・ブルターニュ地方を思い起こさせます。02ooike.jpg

大池ワイナリーのユニークなところは、村内にある同社経営のセブンイレブンでシードルが買えることです。店内のショーケースには、一面に大池ワイナリーのシードルが並べられており、日本全国見回しても、オリジナルのシードルが売られているコンビニエンスストアは、ここだけでしょう。

◆今月のテイスティング

03ooike.jpg・ふじシードル 極甘口
 大池ワイナリーでは5種類のシードルを作っていますが、今回オススメするのは、定番のふじを使い、程よい甘さとりんごらしい美味しさが感じられる極甘口です。アルコール度数2.5%と低めで、普段お酒を飲まない方も楽しめるシードルです。
長野県内で、アルコール度数を抑えた極甘口を発売しているワイナリーは珍しく、女性にも人気です。
*味わい 甘口
*サイズ/価格 375ml / 1,080円(税込) 750ml / 2,160円(税込)*アルコール度数 2.5%cider_midashi_0802.jpg
04kamo .jpg 2016年8月、天竜川沿いに伸びる伊那谷の北に位置する伊那市に、「カモシカシードル醸造所」が誕生しました。長野県の県獣として地域の人々に親しまれているニホンカモシカのように、自分たちも身近に親しまれるシードルメーカー(シードルリー)になりたいという願いを込めて「カモシカシードル醸造所」と名付けられました。
代表を務める入倉浩平さんは、以前より幼い頃から訪れていた伊那に広がる畑を見て、遊休農地にせず有効活用するために何ができるだろうかと考え、ご自身も大好きなりんごの栽培とシードル作りを目指し始めたのは、今から5年前でした。事業としての可能性、そして伊那の未来を考えたときに、その土地を活かした農業とそこで採れた農産物の加工や販売に魅力を感じたそうです。そして産声を挙げたカモシカシードルは、約20種類のりんごを栽培する農家である強みを生かし、9月頃に収穫する早生種から、11月頃に収穫する晩生種まで、それぞれ収穫期に合わせて新鮮なりんごを使いシードルを仕込みます。また、隣村にある信州大学伊那キャンパスの農学部とも協力し、りんごの品種改良も手がけ、日本では珍しい赤い果肉のリンゴを使ったロゼ色のシードルもつくっています。

◆今月のテイスティング
05kamo.jpg・ラ プルミエールセゾン アンセストラル
カモシカシードル醸造所では、既に4種類のシードルがリリースされていますが、今回はその中からデビュー作のシードルをご紹介します。
ラ プルミエールセゾン アンセストラルは、9月に収穫するつがるをベースに、祝やイギリス生まれのグリーン・スリーブスを加え、つがるらしい柔らかい甘みの中に、酸味と渋味がバランスよく感じる瓶内一次発酵の甘口シードルで、伊那への思いと魅力がたっぷり詰まったカモシカシードルらしい味わいをお楽しみ頂けます。
*味わい 甘口
*サイズ/価格 750ml / 1,620円(税込)
*アルコール度数 3%
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06kane.jpg 今回特別に、2016年12月に酒造免許が交付された下條村の「ファーム&サイダリー カネシゲ」に触れておきたいと思います。アメリカのハードサイダーのようなスタイルを目指されているため、英語のサイダーを用いてご紹介します。
 サイダリーの代表を務める櫻井さんは、同級生で果樹園であるカネシゲ農園代表の古田さんに誘われ、農業の道に踏み出しました。自分たちのリンゴらしさを残し、アメリカのようなカッコいいクラフトサイダーを作りたいと思いから、「ガレージサイダリー」をコンセプトにサイダー作りに着手しています。サイダーの初リリースは、今年5月を予定しているため、彼らの取り組みは引き続き追っていきたいと思います。

【まとめ】
2回に分けて、長野県のシードル作りをご紹介しました。
北信、東信ではワイナリーが中心となってシードルが作られてきましたが、中信、南信はシードル専門の醸造所も増えており、欧米のようにより本格的なシードル作りをおこなっていく流れが育まれているように感じます。
次回は、個性豊かな岩手県のシードルをご紹介したいと思います。

【大池ワイナリー】
http://www.go.tvm.ne.jp/~taike_winery_y/
【カモシカシードル醸造所】
http://kamoshikacidre.jp/
【ファーム&サイダリー カネシゲ】
http://ringo-juice.com/

(文・写真:渡部麻衣子、小野司)

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