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【第8回】『手品 インスタント習得法』  安部元章・著

2015年04月01日更新

あるはずのないところから硬貨が現れたり、カードに書いてあるはずのないサインが書いてあったり、縦縞のハンカチが横縞になったり......「手品」と聞いて真っ先に思い出すのは、テレビ番組ではないでしょうか?

chronicle0801.jpg今回ご紹介する『手品 インスタント習得法』(216ページ/昭和56年12月5日改訂第2版第1刷発行/品切れ・重版未定)の著者、安部元章氏は、その先駆けとも言える存在。

テレビ開局の年である昭和28年からNHKに出演し、また同年8月の日本テレビ(NTV)開局直後から「テレビ手品教室」の講師として2年余りの間、約500種類の手品や奇術を紹介されたという方です。
また一方で、都内の高等学校の創立者でもあり、理事長でもあり、昭和54年の春の叙勲において「旭日小綬章」を授与されている方でもあります。

手品は常識の虚をつく芸術

さて「手品は一家団欒の泉であり、社交の花形である」という考えのもとに著された本書には、「誰にでも出来るやさしい、しかも効果的な」手品が豊富なイラストともに盛りだくさんに紹介されています。
しかしここでは、そのひとつひとつを紹介するのは控えまして、「手品」とは何かについて語られた、とてもおもしろい「第1章 序篇」から、少し引用してみたいと思います。

それでは、さっそく読んでみてください。

「我々は常識や先入感念を通して、物を見たり聞いたり判断する習慣がありますが、とかく常識や先入感を通して見聞すると、往々にして見落としや間違いをするものです。私は手品をやって見せる前に、よく次の話をします。

A. 二人のお巡りさんがいました。一人は東を向き、一人は西を向いていました。突然、東を向いていた巡査が西を向いている巡査に
『おい! 君の上衣の一番上のボタンが外れているぞ! なおしておいた方がいいぜ』と御注意をなすったそうです。
どうしてボタンのはずれていたことが見えたのでしょうか?


この話を小さい幼児にすると『見ているから分かる』といいますが、大人はそうは行きません。これは、大人は東と西は正反対だという先入観や常識がありますから、二人の巡査は背中合わせだ思い込み、向かい合っている場合を考えない結果です。幼児にはそんな常識はありません。

B. 池の中に私が小石を投げ込みましたら、その石が沈んだりもぐったりしました。この石は軽石だったでしょうか? 重い石だったでしょうか?

軽石だと思う人もいますし、又考えている人もいます。
勿論普通の石ですから、水より重いはずですが、私のいう『沈んだりもぐったり』という言葉を聞く方は先廻りして聞いています。『沈んだり』と来ると、人間は必ず反対の言葉を連想する習慣がありますから、私が『もぐったり』といっているにもかかわらず勝手に『浮んだり』と先廻りしていて、本当に聞いてはいません」

......どうですか? すぐに分かったでしょうか? 

著者はこれを「常識には虚がある」と言い、「手品とは、見る人の常識の虚をついて錯覚を誘導し、その錯覚を利用し美化した表現です」と説明しています。

そして手品習得上の心得として、世界的な手品研究家の「ジョバアニイ博士」の言葉が引用されております。「Practice, Practice, Practice and Practice,----day and night (練習、練習、練習そして練習、しかも昼も夜も)」。

なるほど、これは見破れないわけです。

chronicle0802.jpg

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