最新記事:2017年10月22日更新
2017年10月22日更新
2017年10月下旬に発売した書籍『ワインの香り』。
この本には、ワインの香りを楽しめるように、特製アロマカードがついています。このカードは組み合わせによって、ワインの中にある27種類の香りをかぐことができます。
ワインの香りをもっと楽しんでいただくために、全力で作ったこの本の魅力を伝えたい! ということで、この連載では、"「ワインの香り」を表現する"をテーマに、著者の方々のインタビューや香りにまつわるさまざまな話をお届けします。
連載第1回目は、著者のひとりである東原和成先生による「はじめに」を公開します。
この本を読んでくれた人がどんなことができるようになるのか、読んだあとにどんな世界が広がっているのかについて書かれています。
【はじめに】
ワインの美しさやおいしさは、色、香り、味など、五感から感じることができます。色は、赤、緑、青など共通の概念がありますし、味は甘い、苦い、酸っぱい、塩辛い、そしてうま味の5つしかないので、簡単ですね。ところが、香りの種類はたくさんあるだけでなく、香りそのものを表現する言葉はほとんどありません。「芳(かぐわ)しい」、「臭い」、「香ばしい」くらいでしょうか。ではどうやって香りの質を表現するのでしょうか?
ほとんどの場合、何かほかの具体的な食品や素材に例えて表現します。レストランに行くと、ソムリエが出てきて、ワインの説明をしてくれます。「レモンの香り」、「蜂蜜の香り」と言われると、なるほどうんうんと想像がつきます。でも、その食材の香りを知らなかったら想像がつきません。「カシスの香り」と言われても、カシスを知らないひとにとっては「?」なのです。
また、ソムリエは、「エレガントな香り」、「白い花の香り」などという表現もします。なんとなく分かったような気になりますが、よく考えてみると曖昧で分からない。エレガントな香りって何? 白い花の香りって何? と思いませんか?「甘い香り」ならまだ分かりますね。でも同じ「甘い」でも、ひとによってはアイスクリームの香りを、また別のひとは熟した果物の香りをイメージするかもしれません。
このように、嗅覚はワインのおいしさにとって一番重要な感覚なのに、香りを言葉で表現するのはとても難しいのです。さらには、ひとによってその言葉でイメージするものがそれぞれ異なるので、伝えるのも難しい。個々人の個人的な経験に左右されます。そこで、香りを表現するときに使える共通の言葉を整備しようという試みがされてきました。そして、アロマホイールあるいはフレーバーホイールというものが生まれたのです。
そしてこの度、日本のワインアロマホイールをあらためて作り、いくつかの香りを実際に嗅ぎながらワインの香りを知ることができるようになりましょうという目的で、本書ができました。
それでは、この本を読んだら何ができるようになるのでしょうか?
・ 香りとは何か、そして香りを感じる嗅覚のしくみが分かります。
・ ワインの香りの正しい嗅ぎ方ができるようになります。
・ ワインの香りを言葉で表現できるようになります。
・ ワインの品種や造り方が推定できるようになります。
・ そしてこれらのことが科学的に理解できるようになります。
本書を読んだ皆さんは、自分の鼻で感じたワインの香りを言葉で表現することができるようになり、そうすると自分が好きなワインの特徴が見えてきます。すると、逆にソムリエにこういうワインが飲みたいと言えるようになります。友人とのワイン談議も盛り上がります。皆さんのワインと食の楽しみかたにも広がりが出てくるでしょう。
さて、前置きはこれくらいにして、早速第1章を読んでいきましょう。まずは、そもそもワインはなぜ香るのか、香りとは何か、というところから入っていきたいと思います
東原和成
『ワインの香り 日本のワインロマホイール&アロマカードで分かる!』
(東原和成 佐々木佳津子 渡辺直樹 鹿取みゆき 大越基裕 著)
全国の書店や、amazonなどのオンライン書店で好評発売中です。
詳しくはこちらから
http://www.kohyusha.co.jp/books/item/978-4-7709-0073-9.html