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【Vol.12】秘すれば おわら風の盆

2015年08月30日更新

高校野球が終わると、一気に夏の収束を感じ、寂しくなります。
みなさんこんにちは、球児たちの応援団長、みやこ小路です。「見てただけやん」とか言わないでください、心は球児たちと一緒に熱く闘っていたのです。だいたいそんな夏でした、はい。

たいしたこともせず高校野球を見てただけ、夏フェスもキャンプも素通りだったね、何もできなくて...夏、な私と違い、アクティブな読者諸君はもちろん富山に旅行に行ってたと思うけど、まだ行ってない人に朗報。むしろここからが本番。

富山県八尾町が誇るビッグなイベント、それが「おわら風の盆」。
毎年9月1日から3日までの3daysで夜通し行われるダンスフェス、もとい盆踊りです。
「東の苗場・フジロック、西の八尾・風の盆」と言われています(私の中で)。8月20日から30日までは前夜祭、9月1日からは本祭で、八尾の各町内で踊りを見ることができます。前夜祭の長さに、富山県民らしからぬ意気込みを感じますね。

越中おわら節にあわせて踊る「おわら風の盆」はかいつまんでいいますと、「はっきりしないがおよそ300年前に発祥し、台風の多い時期、収穫前の稲が風の被害に遭わないように、豊作を祈る行事」だということです。後付けの香りが若干しますが、踊るのに理由なんていりません。踊りたくなったら、そこがあなたのステージです。なんだかよくわかりません。

八尾内の11の町内で町流しをしているところを見られるほか、特設ステージで演舞を見ることができます。町流しをしている時間帯は各町内で異なるので、時間を調べておめあての町内を目指すもよし、ぶらぶら散策してばったり遭遇するもよし。3日間もあるので、ゆったり楽しめます。気合の入った観光客は新年が明けた途端、八尾内の宿を予約して、風の盆にそなえるとか。まるでフジロックじゃないか。

ただの盆踊りを見にわざわざ富山の辺境まで行かないよ、というそこのあなた。

言っときますけどね、踊りのパッと見は確かに「地味」。

だったらなおさら行かないよ、と言わずにまあお聞きなさい。

toyama12_ill_1.jpg踊りや祭りというものは、娯楽が少なかったころの庶民の唯一の楽しみなので、衣装や掛け声が派手であったり、巨大な張り子があったりと、とにかく興奮のるつぼと化す仕掛けが数々あるもの。例えば徳島の阿波踊りであれば、踊り手が「ヤットサー」と声を出して、見ている人にも「踊らにゃ損」感をあおったり、ブラザーコーン氏がでてきて「ウォンビーロング」感を出したりと、まあ派手である。ウカウカしてると、鬱憤をスッキリはらしてしまいそうになる。

そこへくると我らが「おわら風の盆」は、胡弓や三味線、太鼓の音色に動きをあわせながらも、踊り手は一切なにも言わない。笠に隠れて顔も全然見えない。唄やお囃子はまわりを煽るためのものではなく、踊り手にレールを提供しているかのようななめらかさ。踊り手は美しく、静かに踊り続ける。

胡弓の哀愁ある調べと、ぼんぼりの薄暗いあかり。静かに列をなして伸びる影。

どうやら私は「あの世」に来てしまったらしい。

威勢のいい掛け声もない、装飾物もない。そう、「おわら風の盆」は、他の踊りや祭りと違って、わかりやすいスイッチがないのだ。初めはそのわかりにくさに反応できずとまどうが、しばらくその場に身をひたすと、気づけば深く静かな幽玄の世界にフワフワと漂っている、そんな恐るべき盆踊りなのだ。

toyama12_ill_2.jpg笠を深くかぶって顔を見えないようにしているのは、もともとは羞恥心からだったそうで、手ぬぐいをかぶって踊っていたそうな。「踊りたいっ、でも恥ずかしいっ」という富山県民の奥ゆかしさを感じずにはいられない。というか手ぬぐいをかぶりながら踊られるほうが、見てるこっちが恥ずかしい。

見えそうで見えない、という状況は非常に想像力をかきたてられるもので、まさに「秘すれば花」、夜のおわらの雰囲気をよりいっそう研ぎ澄ます演出となっている。

とはいえ、午後5時〜午後7時には、町流しはやっていません。なぜなら町内のみなさんの夕食の時間だから。「腹がへっては踊れない」、泣く子も黙る現実に引き戻された気がしますが、そんな時はビールでも飲んで待ちましょう。夜の八尾の街並みもまた、そこはかとない色気があります。

というわけで、実際に「おわら風の盆」を体験してみてください。心はきっと,

ここではないどこかへ漂流してしまうはずです。盆・ボヤージュ!

【おわら風の盆 場所】

富山市八尾町

■公共交通機関の場合:富山駅からJR高山本線で越中八尾駅まで25分。
<越中八尾駅前から会場内の主要な場所まで> 
福島特設ステージ 北へ100m 徒歩すぐ
八尾小学校グラウンド演舞場 2km 徒歩40分
曳山展示館 2.5km 徒歩50分
※会場内は車両通行止めにより徒歩移動のみ。

■車の場合
富山ICから車で20分
(駐車場)一般車両2,000台、バス800台(許可制) 行事協力金:一般車両1台1,000円、バス1台40,000円

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