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【第3回】国際チーズコンテストでJapan Cheeseが躍進!

2015年07月20日更新

日本のナチュラルチーズは、この10年くらいでかなり質が向上してきていて、日本のチーズ業界の人たちやおいしいもの好きの人たちの間では注目されている、ということは連載初回でも書きました。
ところが、日本国内のみならず、海外でも日本のナチュラルチーズが高く評価されるという事件(?)が起きました!

コンテスト会場web2.JPG

「モンディアル・デュ・フロマージュ(Mondial du Fromage)」というチーズおよび乳製品のプロ向け国際見本市が、今年(2015年)6月にフランスで開催され、この見本市の会期中に「国際チーズコンテスト」が催されました。

一昨年に続き2回目の開催となるこのコンテストには、フランス、イタリアなどヨーロッパの国々のほか、アメリカ、イスラエル、ブラジルなど、世界各国のチーズやバターなどの乳製品が集められ、その出来を競い合います。今回は約600品もの乳製品(そのほとんどはチーズです)が出品され、日本からも28品エントリーしました。

1503naturalcheese_midashi01.jpg
出品した日本のナチュラルチーズは、NPO法人チーズプロフェッショナル協会が昨年開催した「JAPAN CHEESE AWARD'14」で金賞を受賞した11軒のチーズ工房が製造販売しているものに限定。チーズのタイプは、モッツァレッラ、クリームチーズなどフレッシュ系のチーズから、ウォッシュタイプ、青カビタイプ、シェーヴルタイプなどクセのあるもの、または桜の葉を巻いたり、たまり醤油に漬けたりして風味を付け、日本らしさを表現したもの......など、ヨーロッパで馴染みのあるタイプもあれば、日本ならではのアレンジがされたものなど、バラエティに富みました。

コンテスト.JPGチーズのコンテストは通常、チーズのタイプによってカテゴリーを分けて審査されます。カテゴリーごとに順位や賞が決められるのです。コンテストを開催する国によって、このカテゴリー分けは若干違っていて、今回はチーズの大国フランスでの大会ですから、フランスで通常行われている分け方をベースに、世界各国から集まるチーズの様子を見ながら、新たなカテゴリーを足していく方法が取られていました。

その結果、なんと89のカテゴリー(!)にまで膨れあがりました。それだけ世界中でさまざまなチーズが作られていて、実に多種多様なのだということが分かります。

それらのチーズを審査するのは、世界各国のチーズ商、チーズの生産者(コンテストに自分のチーズを出品していないことが条件)、チーズジャーナリストなどチーズ関連の仕事に従事している人たち。3人一組になって、89のカテゴリーごとに約15種類のチーズが審査されました。

審査は
「チーズの見た目」(5点)、「口に入れたときの組織」(5点)、「チーズの味わいと香り」(10点)の3項目の合計20点満点で採点されます。

審査員それぞれが採点し、最終的に合議で「
金賞」、「銀賞」、「銅賞」のチーズを、そして今回は、特に優れていたチーズに「スーパーゴールド」を決めていきました。これらの賞は、各カテゴリーから必ず出さなければならないというものではなく、審査員が「該当無し」と判断すれば、例えば、そのカテゴリーから「金賞」がない、ということもあり得ます。

15naturalcheese_midashi02.jpg
600もの世界中のチーズの中から、スーパーゴールドは21品、金賞は42品、銀賞は50品、銅賞は40品選ばれました。品数からすれば、約1/4のチーズが賞を取ったのですが、約3/4は賞から漏れたということになります。

そんな中、日本のチーズはというと、スーパーゴールドが2品、金賞が4品、銀賞が1品、銅賞が5品と大健闘! いや大躍進!! 出品したチーズの半分近くが賞を取ったのです。

受賞した日本のナチュラルチーズは以下のラインナップです。

【スーパーゴールド】
 ブルーチーズ (アトリエ・ド・フロマージュ/長野県)
 草原の青空 (高秀牧場チーズ工房/千葉県)

【金賞】
 モッツァレラ(敷信村農吉・チーズ工房 乳ぃーずの物語/広島県)
 さくら (共働学舎新得農場/北海道)
 町村農場 クリームチーズ (町村農場/北海道)
 フロマージュ・ド・みらさか・シェーヴル(三良坂フロマージュ/広島県)

【銀賞】
 カチョカヴァロ (ファットリアビオ北海道/北海道)

【銅賞】
 ジャージーミルクのモッツァレッラ(カゼイフィーチョ・ダ・サスィーノ/青森県)
 なかよし。恋よし。 (敷信村農吉・チーズ工房 乳ぃーずの物語/広島県)
 クアルティローロ (ファットリアビオ北海道/北海道)
 フロマージュ・ド・みらさか (三良坂フロマージュ/広島県)
 カレ・ド・ラヴァンド (三良坂フロマージュ/広島県)

正直なところ(失礼ながら)、私は今回これほどまでに日本のチーズが賞をもらえるとは想像していませんでした。このコンテストに出品した工房の大半は、国際コンテストには初めてのチャレンジで、自分たちのチーズが世界でどう評価されるのか、果たして通用するのか? 期待と不安の中で結果発表を待っていたことでしょう。

コンテストは水ものですから、運が良かった悪かったということもあるのを承知の上でも、確実に言えることは、この結果は、日本のナチュラルチーズ品質は間違いなく世界に通用するレベルに達しているということを明らかにしたということです。

そして何より、日本のナチュラルチーズ生産者が自信を持ち、さらに良いチーズを作っていこうというモチベーション向上のきっかけとなるに違いありません。

「アジアの日本でチーズを作っているんだって? しかもこんなにバラエティが豊富で、おいしいとは!」
と海外のチーズ関係者は驚きをもって、展示会場の日本ブースに試食に訪れました。
そこでパリのチーズ商は、
「日本のチーズはどうしたら輸入できるのか? ルートはあるのか?」
と質問をしてきました。
対応をしていた私たちは、まさかチーズの本場に日本のナチュラルチーズを輸出することなど、思ってもみなかったのですが、ひょっとしたら近い将来、日本のチーズがパリやN.Yのチーズショップの店頭に並ぶ、なんてことがあるのかもしれない......と想像しただけで誇らしく、ワクワクしました。

1503naturalcheese_midashi04.jpg

日本のチーズの水準は上がっている。そして、それを私たちも認識し始めた。
----と、今回のコンテストを終えて強く感じています。

このことが、今回のコンテストでの一番大きな収穫かもしれません。
しかしこの結果は、まだまだ通過点にすぎません。

生産者の次に課題となることは、日々のチーズ作りで、品質を維持しながら安定的に生産し、さらに独自性を磨いて、唯一無二のものを作り続けていかなければならないということでしょう。
また万が一、海外に進出していくことになれば、単に良いものを作るだけではなく、国内、あるいは相手国の法令に則った衛生基準を守った安全管理、品質管理などの徹底が求められます。

チーズラバーである私たちの課題は、日本のナチュラルチーズが、ごく一部のマニアだけのものにならず、一般の人たちが日常的に食べるものになっていき、ナチュラルチーズを食べる食文化がしっかりと根付いていくよう、国内でもっとPRをし、応援していくことなのだと思います。

日本チーズ展示web.JPG

【お知らせ】
「2015 モンディアル・デュ・フロマージュ報告会」が開催されます。
主催:チーズプロフェッショナル協会
日時:2015年7月23日(木)18:30~20:45
場所:ベルサール八重洲3階 Room3(JR東京駅・日本橋駅)
定員:100名 *事前申込制 先着順
内容:①受賞チーズ工房 授賞式、②コンクール報告(ナビゲーター本間るみ子会長)、③コンクール出品チーズの試食会(日本ワインと共に)*出品チーズの半数程度を揃える予定です。
詳細はこちらをご覧ください。

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