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第6回【料理のためのワイン、ワインのための料理】

2015年03月05日更新

自分の料理を最大限に表現できるワイン。
「マリアージュ」を考えて日本ワインを揃えるフランス料理店がオープンした。
ワインは日本ワインのみ。
東京・神楽坂の小道を入ったところにたたずむフレンチ
「ビズ神楽坂」の村田シェフの話。

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「ビズ神楽坂」は、神楽坂の路地裏、奥まったところにある。
飯田橋駅から毘沙門天に上がる通りの「新宿神楽坂郵便局」のひとつ手前、ビルの隙間をすり抜けて行く道が、個人的にはおすすめコース。
狭い小道の脇には雰囲気のよい居酒屋なんかもあったりして、非常に神楽坂らしい路地なのだ。

jwine0701.jpg石畳の階段を降りると、突然開けた一角に、ガラス張りの新しいビルが建っている。その2階、ガラス張りの部分が「ビズ」だ。
奥まった場所にありながら、抜け感のある眺望。
ハレ感を楽しめる料理と雰囲気でありつつも、隣の長屋の屋根で日向ぼっこをする猫の姿が見えたりという下町感も味わえる。
このバランスが、肩肘はらない居心地の良さにつながっている。

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jwine0702cap.jpg店主の村田敏範さんは、調理師学校時代に仏リヨンの「ポール・ボキューズ」に研修入店。北海道「ザ・ヴィンザーホテル洞爺」、乃木坂「レストランFEU」を経て、銀座「ミラヴィル インパクト」のシェフに。2014年12月に独立し「ビズ神楽坂」をオープンさせた。昼・夜ともコース料理が主体。揃えるワインは日本ワインのみだ。

王道フレンチの料理に日本ワインのみという選択をしたのには、日本ワインとの鮮烈な出会いがあった。
実は以前は、ワインやお酒全般にあまり興味が湧かなかったという。
「ツーリングが趣味で、バイクに乗るとお酒が飲めないですから」

そんな村田さんを変えたのは中央葡萄酒の「グレイス甲州」。
「まだ日は浅くて、1〜2年前のことなんです。たまたまグレイスさんのワイナリーツアーに参加して、最後にテイスティングがあったときに飲んだ甲州で一気にはまりました。体の芯から『うまいなあ』って感じて。それから何かに憑かれたみたいに日本ワインを飲み始め、柔らかで繊細な味にどんどん惹かれていきました」

神楽坂には、日本ワインの普及を支えた1軒でもある「アガリス神楽坂」というワインバーがある。

「(アガリスのオーナーの)菅沼さんは、僕が日本ワインを知る上での"お父さん"的存在。今でも醸造家の方を紹介してくださったり、イベントにお声がけいただいたりと、いろいろと気にかけていただいています。

ここ神楽坂には『アガリス神楽坂』さんや、『レベル』さんといった、日本ワインを見い出し、素晴らしい造り手を紹介する店がある。それぞれ料理のスタイルは違うけれど、地域で日本ワインのさまざまな魅力を発信できる街ですね。縁あって神楽坂にお店を構えることができたので、僕も地域ぐるみの日本ワインイベントに参加させてもらうなど、一助となれればと思っています。」

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jwine0703cap.jpg「ワインは食中酒。料理のためのワイン、ワインのための料理という意識が強いですね。」と、村田さん。
「ワインと料理は、基本的に3通りの合わせ方があると思っています。それは産地、食材とワインの色、そして調理法です。料理をまず決めて、それからワインを選んでいます。カツオの前菜には、柑橘のニュアンスと合わせて『グレイス グリド甲州』を選んでもいいし、今回のように食材の色で合わせたワイン選びもいいと思います。日本のピノ・ノワールが持つ"だし"感も、カツオに合いますね」

村田さんが作る料理は、デザートを彷彿とさせる華やかなプレゼンテーションと、食感の軽さが特徴だ。
「僕、ソースを食材の上にかけるのが好きじゃないんです。例えばこのカツオのたたきにしても、柚味噌のソースを下に敷いています。これを食材にかけてしまうと、お客様が味を濃いと思った時に調整できなくなってしまう。また、柚子の泡はビジュアルだけでなく、口に含んだ時に爽やかな香りの泡が"軽さ"をもたらすからです」

その考えはパテにも見える。柔らかで淡白な味わいのパテは、圧倒的に軽い。しかし、その淡さゆえ単調になりがちな味を、ピクルスの酸や食感が締める。周りのバルサミコも、食べ手が自分で調整しながら、味を変化させられるアクセントになっている。

「コース主体でやっているので、前菜・メイン・デザートと、いかに"次のお皿"へ期待を繋げられるかが大切。そのため『フランス料理でありながら、いかに軽くするか』を考え、柑橘系やハーブ、野菜の付け合わせ、泡などで調整しています」
jwine0704cap.jpgJwinenomi_komidashi_k06_04.jpg
神楽坂にはワインバー激戦区でもある。フランスやイタリアのワインを好む飲み手も多い中、「ビズ」では日本ワインしか置いていない。その種類は120を超えるとか。

「この地区でワインを飲むお客様にもおいしいと思っていただけるような、王道の甲州種や、樽香を強めに感じる三養醸造のシャルドネなどは意識して揃えていますね。

またデラウエアやマスカットベリーAのような『ヴィティス・ラブルスカ(北米系ブドウ品種)』よりも、カベルネ・ソービニヨンやメルローのような『ヴィティス・ヴィニフェラ(欧州系ブドウ品種)』のほうの揃えが厚いかもしれないですね。これは土地柄もありますが、自分の料理が正統派フランス料理で、欧州系のブドウに合うという自負があるからです」
jwine0705.jpgバルや居酒屋が多いここ神楽坂地域で、あえてコース主体のレストランを開こうと決めたとき、村田さんは、自分のカラーやスタイルを全面に出そうと思った。
「きちんとコースで、ワインとマリアージュしたかった。見た目、香り、五感を刺激する料理を作りたい。そんな僕の料理には、日本ワインの、特に欧州系ブドウ品種のものが相性が良かったんです。お互いが馴染み、寄り添っているような印象を受けたんです」

揃えているワインは、結果的にワイナリーの中での高額ラインのシリーズが増えた。
「日本ワインのコストパフォーマンスは正直、いいとは言えない。1杯、1本の価格がどうしても高くなってしまいます。でも醸造家がつけた価格に対して、安くして出すということはしたくないんです。だから逆に、料理の価格は下げて、幅広いお客様に来ていただけるようにしています。自分の料理が、日本ワインのおいしさが広がるきっかけになれば、料理人冥利につきますね」

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bisous神楽坂(ビズかぐらざか)
東京都新宿区神楽坂5-43-2 ROJI神楽坂2F
tel 03-3267-1337
JR線、東京メトロ「飯田橋」駅から徒歩7分、都営大江戸線「牛込神楽坂」駅から徒歩5分
http://r.gnavi.co.jp/etd8jtsv0000/
席数/19席
営/11:30〜14:00L.O. 18:00〜22:00L.O.
休/月曜
予算/1000円〜(ランチ)、5000円〜(ディナー) ワイン:グラス700円〜、ボトル4000円〜

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第6回【ビズ神楽坂】撮影:牧田健太郎

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