特別企画

学習院柴田ゼミの冒険【第1回】

2014年11月03日 |

「当世大学ゼミ事情」

大学のゼミというと、どんなことをイメージするでしょうか。私(55歳)が大学生だった頃と現在とではゼミの意味が相当に異なってきています。

私が大学生だった頃は、2年続けて同じゼミに所属するのが普通でした。さらに、ゼミの先生の専門分野が大学生としての自分の専門という意識でした。たとえば、先生の専門がアメリカ政治ならば、「私の専門はアメリカです」という感じでした。

我が学習院大学法学部政治学科の柴田ゼミは3・4年次の専門ゼミです。
政治学科のゼミの特色は、ゼミを3・4年まとめて一緒に行うことにあるように思います。つまり、ゼミは1年間のプロジェクトで、1年後には解散、次年度には改めてゼミ生を募集するというイメージです。
昔のゼミとはかなりイメージが異なります。ただ、政治学科のゼミに関して言えば、カリキュラムの狙いとは異なって、多くの学生は2年続けて同じゼミに所属する場合が多いようです。サークルや体育会とは違った居場所を学生は求めているのかもしれません。

ゼミを短期で解散してしまうというカリキュラムは最近では珍しくないようです。
ゼミを半年(1セメスター)で解散して、学生は次々に異なるゼミを渡り歩くというようにしている大学もあるようです。
前回は中国のゼミを、今は社会学のゼミを、次は政治思想のゼミを、というようにです。
私は、これでは自分の専門が何かということが分からなくなってしまうのではないかと心配になるのですが、これにも別の配慮があるようです。つまり、学生と先生との相性が悪い場合に、2年間我慢するのはとても無理だから、ゼミを変えるチャンスをできるだけ学生に多く与えるという配慮だということです。
学生との付き合いもなかなか難しくなってきました。

政治学科では、2月の終りか3月の初めに翌年度のゼミの説明会が行われて、3月の末には、ゼミによって異なりますが、課題を提出させ面接を行ってゼミ生を絞り込みます。全員がどこかのゼミに所属できるわけでないことは分かっていますから、自分の入りたいゼミに入るために学生も必死の努力をします(しているはずです)。場合によっては、2次募集、3次募集まで行われてゼミのメンバーが決定します。

私はゼミを担当して今年9年目ですが、ゼミを担当することになった当初、どんなことをテーマにしようかと真剣に考えました。
どうせなら自分が考えたいことをテーマにして、学生にそれを勉強させる傍ら、自分もそれにきちんとした答えを出したいと思うようになりました。大学生の時から国際政治を専門として勉強してきたわけですが、多くの主題にそろそろ自分なりの答えを出してもいい頃だと思いました。そこで、国際政治の現在と未来を考えてみよう、つまり、私たちが今過渡期に生きているとして、その先にどんな時代があり得るのかを考えてみようと考えたわけです。

この時、私は「私たちは過渡期を生きている」とぼんやり考えていたのです。そこでゼミを「国際システムの変容」と名付けました。国際システムは変化していて、それがどんな変化でいずれどうなっていくのかを考えてみたかったわけです。我ながら未熟だったと今は思います。拙著『ウェストファリアは終わらない』で出した結論は、私たちは過渡期なんかにはいないということだったわけですから。これについては追々詳しく論じていくつもりです。

『ウェストファリアは終わらない』のあとがきにも書きましたが、ゼミのテーマが基礎となってこの本は生まれました。
まさかゼミのテーマから本が生まれるなんて考えてもいなかったのですが、今から振り返ると、こうなる以外にない流れだったように思えるから不思議です。
これからこの連載で、ゼミでどんなことが議論されたかを振り返ることで、現在の国際政治について様々なことを書き綴っていこうと思います。
皆様方にとっての「国際政治入門」になればと思います。

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